古い建物を活かす仕事の依頼が多い。
本当は新築で設計した方が楽なのだが、すき者として取組む理由を挙げてみる。
新しいモノがイイという幻想
現状の不備を、新しいモノにすれば全て解決するというのは幻想である。
解決するためには不備の原因をはっきりさせておかなくてはならない。
新しくするにしても、コストをかけられないなら不備が解決しないこともある。
逆に言えば、原因をはっきりさせておけば既存の改修でも満足できる可能性もある。
現在入手困難な素材
木造古民家などでは現在入手困難な太く立派な柱・梁が使われていることがある。
また、タイル、ガラス、建具など細かい意匠を施した材料が使われていることがある。
現在とは違って製品毎微妙な違いがあり安らぎを感じさせる。
新築でこれらを再現しようとすると手間がかかる分、コストは大きく跳ね上がる。
「新築の方が安くつく」というのはこんな材料を使わない前提で成り立っている。
今よりいいものを建てることができるのか
昔のイイ建物というのは職人の手間がふんだんに注ぎ込まれている。それは木造に限らず鉄骨造、鉄筋コンクリート造でも感じることができる。
コストと工期に追われる現在においても今建っている建物よりイイものを建てることが可能なら、解体し新築することも許されるであろう。しかし仮設のつもりで建替えるのであれば、現状の建物を活かすステップを一度持つべきである。
地域のアイコンという重要な役割
30年以上もその地域の風景の一部となってきた建物は個人だけのモノでなく地域の財産である。記憶に残る風景、それはその地域独自のものであって全国各地にコピーして建てられる製品では担えない。地域の共通の記憶があるからこそ、まちづくりが可能になる。地域を維持していくためには独自の風景は必要であり、歴史を持った地域では尚更である。
古ければいいわけでもない
古ければ何でも残すというわけではない。時代によっては材料の良くない時期もある。何を残して、何を更新するのかを適切に判断し次の時代につなげていくべきである。
建替えしか提案できない業者が多い中で、相談窓口の一つとして役割を果たしたいと思っている。