西脇の古民家再生・Ⅰ

 西脇市津万地区の国道脇に以前から気になる古民家がありました。しばらく空き家になっていたようですが、今回地域の住民が集える “まちづくり拠点” として再生することになり改修計画策定、現地指導を行いました。

 建物は昭和初期に建てられたと推測します。元々地場産業である釣り針関係者の屋敷だったと聞きます。

建築概要

主屋:木造2階建
 1階床面積 145.7 ㎡ 2階床面積 86.1 ㎡

蔵:木造2階建
 1階床面積 23.3 ㎡ 2階床面積 23.3 ㎡

離れ:木造平家建
 床面積 56.8 ㎡

 敷地は国道につながる東西に延びた市道の南に面する。間口約30m、奥行約18mの敷地、北西に主屋が建つ。主屋の西に蔵、その南に離れが建ちそれぞれ屋内でつながっている。主屋の南側にかつて土塀があり敷地が囲われていたというが現存しない。玄関から南に内塀が延び外部と庭を中門で区切る。

主屋南面

 主屋は東西桁行7.5間、梁間5間、2階建、入母屋造、桟瓦葺。2階は軒裏、垂木共塗籠められ、下屋の軒裏は野地垂木顕しである。1階2階共壁は白漆喰で覆われ、1階の腰壁は焼杉板張りである。2階窓には木製のお多福窓が一部残っているがアルミ製に取り替えられた箇所が多い。
 平面は元々四間取りだったものを中廊下型に改造している。それを更に洋間を多く取るなど大きく改変が加えられていた。入口は南側に玄関を持つが道路に面する北側からも入れるようになっている。但し北側の入口は低いので主の入口としては使われてなかったと想像する。
 この建物には階段が2ヵ所あるのが特徴的である。2階は階段を含む8帖大の和室と床、違い棚を持つ6帖の和室、そして約24帖の広間からなる。

主屋・中庭より

 蔵は東西桁行3間、梁間2間、切妻、桟瓦葺、軒裏は野地垂木顕しである。小壁白漆喰塗、壁は焼杉板張りである。丸窓をいくつか持ち、妻面2階の丸窓庇には立派な鏝絵を施した持送りがある。入口は室内に面しており腰壁にはタイルが貼られている。

蔵の丸窓・持送りの鏝絵
蔵・腰壁のタイル

 離れは南北桁行5間、梁間3間、厨子二階建、入母屋造、桟瓦葺。上階は軒裏、垂木共塗籠められ、下屋の軒裏は野地垂木顕しである。
 平面は8帖間2室が連なる。共に床を持つが南側和室は付け書院も付属する。中庭に面する東側と南側に縁側が巡る。西の屋外に設けられた便所に続く。

離れ