もったいない
私は建築家である。できるなら自分の思うように家をデザインしていたい。古い建物は壊してしまって新しい建物にすればいいと思う。けれども、古い建物を壊すからには其処には其れ以上の建物を建てなければならないと考える。そうなると許される予算、工期、現在流通している材料から想像すると今建っている建物を残し使った方がはるかに得ではないかと思えてくるのだ。埋もれていた宝を掘り起こすように、また見つけた宝を磨きあげるよう建物に手を加えていく。そのための提案、設計をすることもいいのではないかと思っている。
技術の継承
古民家を残そうとしても、50年以上昔に建てられた家と現在の家とはその作り方が違ってきている。現在の家はできるだけ省力化することを考えられていて習得するのに何十年もかかるような“職人技”が要らなくなってきた。(もちろんそれは悪いことばかりではないが、切捨てられたことも多い。)
ただ古民家を修復しようとすると昔の技術が必要な場面がどうしても出てくる。現在の技術・仕様に置き換えることができるものもあるが、そうはいかないところがどうしても出てくる。しかしごくまれに使う技術でもその習得には多くの経験が必要であり、また道具にしても機会が多くないと揃えることもできない。いや道具を作る職人も需要がないと辞めてしまうのである。
今改修した古民家も何年後かにはまた修理が必要になる。技術を失わないためにも多くの古民家を残す必要があると考える。
だけど所有者からの相談がない
古民家を残そうとしても、所有者が残す意思を持たなければどうにもならない。また仮に売却となったとき更地にして売却をするということが多く、その跡にはCGパースからコピー&ペーストしたような住宅が建並ぶのがとても残念である。
先ずは今建っている建物の価値を知ってもらいたい。