文化財って何よ?
文化財保護法で規定されているのは次の通り。
- 「有形文化財」
建造物、絵画、彫刻、工芸品、書跡、典籍、古文書その他の有形の文化的所産で我が国にとつて歴史上又は芸術上価値の高いもの並びに考古資料及びその他の学術上価値の高い歴史資料
- 「無形文化財」
演劇、音楽、工芸技術その他の無形の文化的所産で我が国にとつて歴史上又は芸術上価値の高いもの
- 「民俗文化財」
衣食住、生業、信仰、年中行事等に関する風俗慣習、民俗芸能、民俗技術及びこれらに用いられる衣服、器具、家屋その他の物件で我が国民の生活の推移の理解のため欠くことのできないもの
- 「記念物」
貝づか、古墳、都城跡、城跡、旧宅その他の遺跡で我が国にとつて歴史上又は学術上価値の高いもの、庭園、橋梁、峡谷、海浜、山岳その他の名勝地で我が国にとつて芸術上又は観賞上価値の高いもの並びに動物、植物及び地質鉱物で我が国にとつて学術上価値の高いもの
- 「文化的景観」
地域における人々の生活又は生業及び当該地域の風土により形成された景観地で我が国民の生活又は生業の理解のため欠くことのできないもの
- 「伝統的建造物群」
周囲の環境と一体をなして歴史的風致を形成している伝統的な建造物群で価値の高いもの
これらは基本的に「芸術的に優れているもの」「価値が高いもの」であるからそのまま後世に残しましょうという考え方を持っている。
人間の活動記録は全てある意味文化財だ!
「民俗文化財」の項にあるが「生活の推移の理解」というのも文化として重要な項目だと思う。芸術的に他より抜き出ているのも重要だが、普通の人々の生活も後世の人から見れば研究するに値する立派な文化財である。だからといって全て残すべきとは思わない。だがありふれている時代には気づかないこと、気にしなかったことがある。それらを失う前に価値を確認し、場合によっては保存することは必要ではないだろうか。
登録有形文化財って?
1996(平成8)年に創設された制度。これまでの指定制度では抜き出ていなければ文化財として扱われなかったため
1995年の阪神淡路大震災直後、文化財に指定されていない、普通に存在してた地域の古い建物が公費解体されてしまったことを背景に制度化されている。
登録文化財は届け出制になっており、一定の基準を満たせば登録されることになっている。
【登録有形文化財登録基準】
- 国土の歴史的景観に寄与しているもの
- 造形の規範となっているもの
- 再現することが容易でないもの
他の文化財制度は材料も含め元の姿をそのまま保存することを目的とし改修や改造に許可が必要なのに対して登録文化財制度では外観に関しては届け出が、内部に関しては自由に活用することができる。文化財だからといって普段内部を公開するといった義務はなく住宅でも普通に生活を続けることができる。
このように登録文化財は「ゆるやかに守る」という制度だが指定文化財に比べて劣っているというわけではなく、登録文化財から指定文化財や重要文化財になった例もある。
登録有形文化財っておいしいの?
指定文化財は制限がある分、改修工事補助金もでる。
登録有形文化財は固定資産税(建物)や相続税の減免等があるものの、改修工事に対する直接の補助制度はない。
じゃぁメリットは?
この建物を使って商売をされている方には大きな宣伝材料になると考えている。
ゆるやかに守る制度でも「文化財」という冠がつく。通常の商店は行政の出す観光パンフレットに載せることはなかなかないが、登録文化財なら「文化財」として観光パンフレットに載ることは不思議なことではない。
テレビ、ラジオ、雑誌等の取材も取上げられるきっかけにもなる。店舗・施設が文化財であるということは新築では簡単に真似のできるようなことではないのである。
指定文化財は地域に同じような建物があれば最も価値のあるものが指定されるが、登録文化財はそれぞれ登録されることも可能である。
地域にそれだけ文化財群ができると行政も考えが変わっていくだろう。そのような地域を残す動きになれば自治体による改修補助制度ができることも考えられるし、そうなれば個人の住宅にも適用される可能性がある。
外観を残そうという意思があるなら、登録して損はしないのではないだろうか。