11月10日(日)西脇小学校で「木造校舎耐震補強の専門化のお話しを聞く勉強会」が開催されていたので参加してきた。
西脇小学校の木造校舎は3棟ありこの校舎が1936(昭和11)年に、残り2棟が翌1937年に竣工している。設計は内藤克雄。彼が創業した内藤建築事務所は1914(大正3)年創業、兵庫県内に多くの近代公共建築を設計した民間の設計事務所である。
講師は花田佳明神戸芸術工科大学教授と東京大学生産技術研究所の腰原幹雄教授。これまで携われた事例と共に木造校舎の耐震補強改修について話された。
具体的な内容はさておき、歴史的建物を残すための重要なキーワードをたくさん確認することができた。
現状西脇小は「保存」か「建替え」かに議論が二分されている。現状の不都合(耐震性、バリアフリー化、トイレの位置など)はRC造に建替えれば全て解決する派と改修で対応できるとする派。費用も改修の方が安くできるという試算が出ている中で市がまだ保存に傾かないのは地域ごとの事情があるので深入りはできない。建物を維持していくためにはそれに関わる人の覚悟なしでは実現しないのだから。
けれども覚悟を促すための材料を揃える手伝いはできるかもしれない。
価値の整理
建物の歴史的な価値、時代背景や建築史、技術史的な位置づけ、建築家、施工者について関連づける。
建物の特徴を示す。何を残し、何を変えてもいいのか。
変えるにしてもどいうことを設計者は考えているのか常に説明できる状態にしておくことが必要である。
使い続けるべき
使い続けることのできる文化財的建物という価値を示す。
地域の人多くの人に使い続けてもらうことによって地域に愛着のある建物であり続ける。
記憶を残す
たとえば一旦更地にしたら同じ物を建てることはほとんどない。今の建物に愛着あるなら改修してでも残すべき。
残っていればいつか活用する機会が得られるかもしれない。
建物がなくなってそこに何があったかすぐ思い出せる人は少ない。風景が人々の記憶をつなぎ止めるのに必要だと言うこと、常々私も話しているので共感する。
三木市の歴史的建物の保存と活用に関わっている私にとって西脇は同じ北播磨のまちとして脅威である。西脇の人はなかなか気づいていないようだが
・古い建物が残っている。来住家住宅、コヤノ美術館
・近代工業の遺産(のこぎり屋根工場
・昭和の風景が途切れなく続く町並み
・西脇小学校、旧西脇消防屯所のような近代建築
・西脇市役所庁舎、市民会館、野村町公民館のような昭和建築
・岡之山美術館、テラドームのような著名建築家の建物
など歴史の縮図がどれも現役で状態もよく活用されている。これだけでも建築関係者は訪れたくなる要素が溢れている上尚かつ中国縦貫道社ICからすぐという便利さがある。
西脇市が本気でこれらを観光資源として活用すれば北播磨一の観光地になる可能性もあるのだが、まぁまとまることはないだろうと安心しているところはある。
しかし、これだけ良い建物、風景が知られずに失われていくのはとても残念である。
木造校舎を模してRC造3階建にする話で、県の景観形成重要建造物の指定が解除されるかという点で、「引続き指定を受けることができる可能性がある」と聞いていると説明があったが、可能性が0でないだけで、この建物を簡単に建替えようと考えるような人たちに指定存続できるような建物をつくることは無理だと思う。私も県の景観アドバイザーであり、また景観形成重要建造物の指定を断られた経験があるのでハードルの高さは分かる。
木造とRC造の部材寸法の違い、2階建と3階建のボリュームの違いを違和感ないよう以前と同じ風景をつくり出すにはかなり難しい。ハリボテの風景をつくることは簡単だが、それで景観形成重要建造物に指定されれば制度自体が意義を失ってしまう。
景観形成重要建造物の指定を重要視するなら改修する方が容易いし、県の助成金も出る筈ではないだろうか。