されど、ジャン・ヌーベル

されど、ジャン・ヌーベル
 先日、「デジタルよりアナログ。手を動かさねば。」と書いたが、ジャン・ヌーベルはデッサンをしなかったらしい。

 ジャン・ヌーベルは、デッサンをしない。彼にとって建築とは、もはや手作業ではなく、その固有の性質を提示すべきもので、素性や、配置や、構想の問題である。この建築家は、他の学生たちが建築の学位をとるために山のような設計図やどこかで見たようなデッサンを提出したのに対して、自分だけは1点のデッサンも含まない21×29.7センチ(A4サイズ)のタイプ打ち原稿を提出した最初の人間であることを、しばしば強調する。「私は紙の建築家ではない。私が美しいデッサンの喜びのためだけに、建築計画を発想することは決してありえない。」

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 そもそも建築は紙の中に納まるものではない。デッサンも、平面図も、立面図も縮小された絵の中で人は実物を想像するしかない。コンピューターグラフィックスによるヴァーチャルな空間は彼にとって建築計画をあらわすには適しているようだ。
 しかし、彼は“コンピューターによる想像世界”「コンピューターによる建築ではなくコンピューターによるイマジネーション〜イメージは我々の心象世界を刺激し、イメージの非物質的な本質を現実世界に具体化したい」と言う。
 そう、紙にしろコンピューターにしろ、あくまでも「具体化」のためのアプローチであり、ゴールではないんだ。