リフォームのデザイン

 いわゆる建物の「リフォーム」という言葉には“改修”や“改装”という意味が込められている。

【改修】悪い所やいたんだ所に手を入れて直すこと。
【改装】外観や内装などを新しく変えること。もようがえ。

似ているようであるが、微妙に違う。
 改修を目的としたリフォームでは元のデザインを変えるような工事をすることは少ない。現状維持、更新が主となる。だが改装を伴った場合でもデザインに手を加えなければならないことはない。

 あなたは今、いわゆる「古民家再生」を立派に成し遂げた、としてみよう。<中略>
 しかしふいに、完成した民家を眺めているうちに、だんだんと心配になってきたのであった。わたしは何を新しくこの民家に付け加えることができたのだろうか?と。屋根の勾配も木製建具の醸し出す壁面のリズムも、周囲の環境もすべて調和している。破綻はみじんもないのであるが。
 <中略>しかしできたものは何の変哲もない「民家」であった。もしやわたしには「独創性」とやらが欠如しているのではないか?「民家」にこだわる自分そのものが、文化的、芸術的落伍者なのではあるまいか、と。
from チルチンびと2004年秋号『宇宙人とバラック−SF的リノベーションの考え方』中谷礼二大阪市立大学講師

 リフォームを手がけていると何かしら新しい仕掛を取入れなければならない感が湧いてくる。しかし、その場にふさわしい状態を考えたとき、「元の姿に戻す」ということが最善の場合もある。
 もちろん新たな機能を追加した場合建物に変化は発生するのだが、それを感じさせないように収めることもデザインの手法の一つである。単に新しい部分だけパーツが増えるのではなく、それらをまとめて元の形に取込むのである。それは「何の変哲もない」ように見えてしまうが、デザインの要素を付け足すよりも難しいのである。
(書留めておきたいと思いながらいたのですが、いつのまにか「チルチンびと」は冬号の発売シーズンになってしまいました。3ヶ月間保留してた記事。)