捨て去るものを捨て去って

吉田桂二氏の言葉

 町家には捨去るべき部分もある。それがあるのは事実だから、町家を過去のものとして見てしまうのであろうが、捨て去るものを捨て去って町家を現代のものとして蘇らせよう。

from 「チルチンびと 2006年 07月号」『町家の再発見』
 密集した土地に住まう都市型住宅の提案です。主に土地区画、建物配置から見た町家の再評価をされているのですが、町家〜古い建物の良さというのは構成部材の美しさというものもあります。
 全てを保存すべきとは言わず、捨去るべき部分を捨てるという話は、現存する町家に対しての提案かと思いまいたが、新たな住宅開発地に対しても町家型の区画割を提案されています。
 都市型住宅としてこなれていたところを否定して、都市に郊外型住宅を持込んだところに問題があるということのようです。
 設計者の立場から言えば住う可能性は高いのですが、購買者の価値観をどうくつがえすことができるかというのがポイントです。

 家の造りようが急変したのは、およそ半世紀ほど前のこと、太平洋戦争が終わってからである。戦後に急変したのはそればかりではない。社会の体制が封建制を拭い去って、民主化の方向へと大きく転換したことで、全てが否定された。

 戦後復興×封建制の崩壊が日本のモノを否定し、手本としたのがアメリカだったのが不幸の始まりだったような気がします。歴史のあるヨーロッパを手本としていればもう少し事情が変わっていたかもしれません。
 雑誌「チルチンびと」は今月号から隔月発行。発行回数が増えるので薄くなるのかと思っていたら逆に増量しています。