家相・風水考/その5

 家相・風水を調べていくと次第にたどりつく“ゲニウスロキ”という言葉。
 もともとラテン語で「地霊」という意味のようだが、その土地のかもしだす雰囲気に逆らわず、馴染むようにして建物を建てるべきという西洋における風水学のようなもの。
 建築家 吉村順三氏の著書を見ていると、ちょうど“ゲニウスロキ”という言葉が頭に浮かんだ。

中村 先生の設計した建築を実際見に行って、いつも感心するのは、建物がすごくよくその敷地に馴染んでいて、ちっとも違和感を感じさせないことなんです。(中略)何か敷地を見るポイントのようなものがあったら教えていただけますか。
吉村 ポイントっていうのは、特にないけど、設計をはじめる前に必ず敷地を見に行くことにはしているね。(中略)設計は敷地を実際に見て、そのことをしっかり頭に入れてから取りかかれば、ちゃんとうまくいくんだよ。

from 『吉村順三・住宅作法』吉村順三・中村好文 著 「敷地を見る目」
 ここでは“ゲニウスロキ”という言葉は使われていない。けれども建物を計画するときに必ず敷地を見てから設計するということ、そしてその建物が敷地に馴染んでいるということは“ゲニウスロキ”を取入れていると言えるだろう。たとえそれを意識していなくても。

 洋の東西を問わずその土地における気の流れに逆らわないのが吉という諺がある。もし逆らう場合はそれなりの対策が必要であり、それについて家相や風水は述べている。その大前提である土地を診ずに家相・風水を気にするというのは、患者を診ずに薬を処方するようなものだと思う。