「選ぶ人」

 「iTunes Music Store」(iTMS)が人気らしい。膨大な数の曲をネット上でバラ売りしているということだ。(iTune、OS8.6では使えないから詳しく知らないけど)

では、配信時代は誰が主役になるかといえば、それは「選曲家」である。iMixを例に出すまでもなく、iTMSの膨大なデータベースから面白い曲を見つけてくる嗅覚と検索能力、さらには一定のコンセプトやテーマを持ったプレイリスト=アルバムをコンパイルする編集者的センスなどが、そこでは問われる。

from 『MacPower』2005年10月号 「ネット上に誕生した新しい音楽ショップのこと」(text 小野島大)
 これまでのLPやCD時代でもオムニバスアルバムは存在していた。そこにはもちろん選曲する人がいたはずだ。また個人でテーマに沿った曲を集めてカセット(今はMD?)に編集するということは少なくない。
 iTMSの出現によって膨大な数の曲が手軽に入手できるようになったため、選曲していた人がアチラ側から独立して存在できるようになってきたということだろうか。数が多すぎると個人で選ぶには労力が多すぎる。人は自分の好みの音楽を選ぶ人(選曲家)を選ぶのだ。
 家づくりにおいても本来、膨大な量の製品の中から材料を選ばなくてはならない。「選べない」というのは不満がでるが、「何でもできる」というのもなかなか面倒なものだ。
 「選ぶ人」が独立して存在してきたことは何も音楽の世界だけではない。街に行けば「セレクトショップ」という、テーマ(スタイル)に沿った商品を集め販売する店が増えてきた。そこでは扱う商品分類の垣根は存在しない。スタイルに合っていれば何でも揃う。ユーザーは自分の好みのスタイルを扱う店さえ見つければ、膨大な量の商品を探すため多くの店をさまようということはなくなるのだ。
 何でも揃う時代。そして性能に大差がなくなってきた時代。すでに「何でもできます」というセールスの時代は終わったかもしれない。デザイン・スタイルを主張し、それに沿ったものを「選ぶ人」として設計者が役割を担う時代になっている気がする。