先日の続き。
次に地中化の費用を誰が出すのかという問題。
松原隆一郎:著「失われた景観—戦後日本が築いたもの」によると、結局日本では「安い電気の安定供給」ということが電力供給会社に与えられた至上命題であった。コストのかかる電線地中化を推進してその費用を利用者に転嫁することは許されなかった。・・・・と言うより「景観の観点から地中化すべき」という世論はなかったようだ。なんせ戦後復興の意識のままだから。
地上に電線を架けることによって今の安い(?)電気料金が設定されている。これまで電線地中化は事業として電力供給会社が負担するものとして命ぜられてきた。しかしそのことによって電気代を上げることには踏切れていない。
ここにきて政府・自治体がその費用を一部負担する動きも増えているようだ。ダムやハコモノ建設など公共事業が反対されるなか、「景観」という名目で電線地中化という公共事業は予算化しやすいのかもしれない。またそういう動きのなかで埋設の方法もコストがかからない方法が認められるようになりつつあるそうだ。
ただ、電線地中化工事は住民にとっても苦労を強いられる。長く続く工事によって騒音や不便はある。まぁこれはガス管敷設工事や下水道敷設工事も似たようなものだろう。前述の本にはトランスの設置場所について民地を提供しなければならない場合もあると書かれている。それよりも負担が大きいのは宅地内の引込のやり替え工事だろう。これはきっと建物所有者の費用負担になる。これまで電柱から直接建物に引込んでいた電線を今度は地中で各敷地に引込むようになる。敷地内の地中化は個人負担だろう。やり替えになると何十万円かは必要になる。引込んだところにポールを建てて敷地内に電線を架けるという手はあるかもしれない。(電線地中化の意に反するが)それでも費用は必要になる。しかしやらないわけにはいかない。なんせ、電柱が無くなるのだから。
ただ障害になっているのが費用の問題だけなら、解決の糸口は見えてくるような気もする。
続けられるかな?