壁の生みだす空間

U邸見学@西宮
設計:吉阪隆正 1956年竣工

隣の敷地では面白いことやってますね
>あさみ編集長

 外観や平面図を見るだけではゴツゴツした硬いイメージ。あまり興味を惹くような存在ではなかった。
 しかし、一歩室内に足を踏み入れるとなんともいえない雰囲気に包まれる。・・・・そう、まさしく「包まれる」という感覚に陥る。
 明るい部屋ではない。しかし決して暗い部屋ではない。光が降りそそぐ部屋である。
 様々な“壁”の表情をもつ建物だ。美しい矩形グリッドのラーメン構造をしているが、壁はそのグリッドに沿っていない。主旋律とオブリガートのようである。
 ラーメンから壁が自由になるなら、現在なら全て開口というデザインにしてしまうだろう。しかし“壁”なのだ。
 壁であるがコンクリート以外にレンガや波型など様々なテクスチャーを見せている。そしてそこに窓が存在する。
 “窓”といってもそれぞれ役割が異なっている。
「景色を眺めるための窓」「光を採入れるための窓」「換気をするための窓」
1つの窓にいくつもの役を負わせない。「光を採入れるための窓」は高い位置でよい。色の付いたガラスでよい。「換気をするための窓」はガラス窓でなくてよい。
 複数の役を持たないのなら“窓”は多くなりそうなのだか、印象的なのは“壁”なのである。
 広い空間とは“壁”のない空間ではない。様々な壁がSceneをつくりSceneの数だけ空間を生みだしている。面積は少なくてもシーンの数はとびきり多い。この家の印象だった。