ミニ開発の戸建ては集合住宅だぞ

 ミニ開発とは概ね都市計画法で定める開発許可申請を要しない規模の土地を細かく細分化し、戸建て住宅用に造成してできた土地区画である。
 工場跡地や田畑の一部の土地が手放され、突如住宅地が現れるということもある。また大邸宅が手放された結果、土地が分割され住宅密集地が生まれることもある。
 住宅密集地など造らくても済むならそうしたいものだが、経済的(経営的)理由からそうならないことが多い。ならば集団計画でミニ開発地を良くすることが出来ないかと考えたが、失敗したという例が日経アーキテクチュア誌に載っていた。


 日経アーキテクチュア 2006年9月25日号『建築家が挑む戸建て開発』より。

設計者が知恵を絞ったコンセプトであっても、客が付かなくては事業そのものが危うくなる。<中略>「こんなプランでは期限内に売り切れない」「客への説明が困難だ」「建築家と一緒に建てたいと思う客ばかりでない」といった意見が噴出した。

「我々建築家サイドは、不動産側の現実をあまりにも知らなかった。建築条件付き分譲地では、客が付いて確認申請を通してからでないと、売買契約ができない。契約に至らないとお金が入らないので、不動産会社は設計を急がせる」

 不動産会社主導のミニ開発。建築条件付き分譲地。ココの不動産会社社長はミニ開発の環境を少しでも良くしたいと建築家をプロジェクトに招く。しかしいつもの販売方法を念頭に進めるので、結局中途半端な計画で終わる。
 「客が付いて確認申請を通してからでないと、売買契約ができない。」というのはいつもの販売方法で進めるからだ。土地の売買契約は確認申請と本来関係ない。土地の売買契約は可能だ。ただ多くの客は住宅ローンで土地を購入する。住宅ローンの場合確認通知がおりないと融資が認められない。それまで売買が履行されないというだけだ。
 逆にローン融資が無くても土地を購入できる人はいる。しかし、先に土地の売買を完了させてしまうと、“建築条件付き”という旨みが危うくなってしまう。自己の土地にどの業者に住宅を発注しようと文句がつけられないからだ。
 この開発地の特徴として狭い土地だが着工順序を制御することによって施工性を高めるというような点が挙げられている。しかしこういう点は全ての区画が着手できるようにならないと意味がない。
 また区画全体の環境を考えが個々の住宅のプランに影響するので、そう易々と施主の希望に合わせて変更することができない。変更すると普通のミニ開発となんら変わりがない。
 本当なら、このプロジェクトは建売住宅にしてしまい、実物を見てもらって入居者を募るべきだったと思う。
 マンションなど集合住宅はそのほとんどがプランの変更ができない建売住宅だ。(建てる前から売ってしまっているが)
 たとえ“戸建て”という形態に見えても、全体の利を優先させるある意味“集合住宅”なのだから、そういう視点で販売計画を立てることができればよかった。
 建売住宅はリスクが大きい。また客も注文住宅に比べて制約があることに抵抗があるかもしれないという不安がある。
 しかし、建売住宅でも立派なものなら売れるという前例さえあればこの方式は増えるはずだ。
 そうは言っても経営者が前例なき道をリスクを抱えて進むのは辛い。建築家もそのリスクを背負うわけにはいかない。
 時々、このようなミニ開発地の事業コンペが公団等によって行われることがある。しかしそこで当選する案は一団地の計画性よりも、従来の民間の計画にコストを削減させた案ということが多い。
 官でさえ先頭を切って走ることができない業界だ。良質の住環境をつくるため排除しなければならない慣習はまだまだ多い。