聴竹居

 「聴竹居」見学の日、『チルチンびと 2008年 07月号』を購入して電車内で眺めていると「聴竹居」の記事が掲載されていた。
チルチンびと、今回の特集は「風の道のある家」。聴竹居は温熱環境に配慮した住宅として取りあげられているが、実際の効果については1年を通じて生活しないと私はなんとも言えない。
そんなことより、デザインと構成が面白かった。
「聴竹居」を以前見つけたのは『作法と建築空間』という本の中。「座する和室と椅子の洋室とで視線の高さを合わせるため和室の床高を上げてある」「和と洋の融合実験住宅」というような内容が書かれたあった。
築80年、昭和のはじめ頃の住宅といえばまだまだ伝統的和風住宅。(かなり簡略化傾向)そこへ洋風の部屋が少しずつ持込まれているが、基本的には従来の家づくりを守っている。否、抜け出せていない。
また洋風建築といえばコテコテのデコレーションが施された建物が数多く竣工している時代だ。
そんな時代、この「聴竹居」のデザインはシンプルかつモダンである。従来の和の紋様とは異り、洋のデザインである。これは現代の住宅としても十分通用する。
目を惹くのはデザインだけではない。この時代、既に敷居は床面と同一のバリアフリー。キッチン流しにはダストシュートが設けられゴミは外の箱の中に落ちていく仕組みである。
部屋にはそれぞれ目的が与えられ、その目的にあったしつらえがデザインされている。一つの部屋で何にでも対応させていた従来の住宅とは考え方がまるで違う。
「どのように生活するか」ということがしっかり考えられていること、強く伝わってくる。
本来、設計とはこういうものであるといことを再認識させられた気がした。
現在の既製品をはめ込む(コピペする)だけの行為などは設計などと言ってはならない。