やはり景観をよくすると地価が上がるようです

以前書いたのは日経アーキテクチュアの記事からでしたが、このたび国土交通省から景観の経済評価指標の検討について発表されています。
『「景観形成の経済的価値分析に関する検討報告書」及び「建築物に対する景観規制の分析手法について」の公表について』 from 国土交通省
 資料1 「景観形成の経済的価値分析に関する検討報告書」概要【PDF様式】
 資料3 「建築物に対する景観規制の分析手法について」概要【PDF様式】
関連するリンクの
景観:良好な景観の形成(国土交通省景観室)にある「景観形成の経済的価値分析に関する検討報告書」(PDFファイル)は134頁、
国土交通省> 住宅・建築(住宅局市街地建築課)「建築物に対する景観規制の分析手法について」関係(PDFファイル)は55頁ある内容でまだしっかりと読めていませんが、パラパラと見ているとおもしろそうな調査内容です。
とりあえず「資料1」「資料3」の概要だけを見ておりますが、結論は景観規制を行うと経済収益が増加するということです。

○建築物に対する景観規制のプラスの効果
調和のとれた街並みが形成されること、圧迫感のある建築物が出現しないこと、地域のシンボル的な景観や眺望が確保されること、日照・通風が増加すること、及び、これらにより地域への来訪者や観光客が増加し、地域の商業収益や観光収益の増加が期待できること等
○建築物に対する景観規制のマイナス効果
建築の自由度が減少すること、場合によっては建築コストの増加を招くこと、過度の規制を行えば、容積率や建築物の高さなど希少な都市空間を過度に抑制し、結果として土地利用が抑制され、地域の経済活動が制約されるおそれがあること等
資料3 「建築物に対する景観規制の分析手法について」概要 より

一応、プラスの効果もあればマイナスの効果も生じる。どちらの影響が大きいか検討する必要があるということが書かれたありますが、基本的にはプラスの効果が大きいとするまとめです。
それを地価に置換えて比較しているのが面白いです。
読んでいると反論したくなるような記述もところどころありますが、景観をよくするためにこのような手法を使うのは有効であるような気もします。
国もこのような場所で発表するということは、景観の経済的な効果を推し進めていきたいのでしょう。
では、この効果を実現させるためにどうすればよいのでしょうか。


国土交通省の管轄では「景観の法規制をする」ということになりそうですが、それではマイナス効果を見てしまい抜道ばかり探してしまいそうです。
「経済効果がある」という前提で景観規制を行うのですからまず必要なのは
「景観に配慮することによる融資枠の拡大」だと思うのです。
法の規制よりも「この地域でこのような街並みを保つなら融資枠を増やします」と銀行が言えるのなら成功するような気がします。
「経済効果がありますよ」というだけでは絵に描いたモチ。それを現金化するシステムがないとその考えは広まりません。現在はその土地の立地条件とそこに建設可能な延べ面積によって地価(≒融資枠・・・・抵当額)が決定しますが、「景観も評価しろ」と銀行に言う必要があります。(国土交通省が?)
この評価を銀行がするなら、もし現在より景観が悪くなれば地価が下がり不良債権化するおそれがあるので、自分勝手な建築主を抑制できるかもしれません。資本力のある企業が大規模開発を行おうとも、その事業や分譲または賃貸には銀行が絡んでくるので周囲の地価を下げるような行動には水をさすことができるかもしれません。
ただ「安いときに土地を買って、景観がよくなると売る」なんていう地上げはなかなか難しいでしょう。けれども「景観が良い場所に変なビルができて地価が下がる」なんてことは簡単に起こり得ることです。
このリスクをはたして銀行が負うことできるかどうか。
もしできたとしても、成功した前例だけを追う景観設計を強いられるような気がするのですが。